気軽に手に取った本でしたが、久しぶりに後をひく…心に残る小説でした。
主人公と私がほぼ同じ生年という設定ゆえ、描写される1980年代後半の大学生から見た東京の風景、風俗が自分のそれと重なります。
本の紹介文に「誰の人生にも温かな光を灯す、青春小説の金字塔」とありますが、それはほのぼのと温かい光だけではありませんでした。
主人公と出会い、交流した人はみな彼に影響を受け少しだけ人生が展開していく…そしてすっかり大人になった時、ふと思い出す…しかしその時、彼は昔の恋人に希望に満ちた数枚の写真を残して旅立っています。
小説の最後…主人公の母親の手紙から「…世之介が自分の息子でほんとによかったと思うことがあるの。」「世之介に出会えたことが自分にとって一番の幸せでなかったかって。」という言葉は沁みます。
そして残された数枚の写真にまつわるエピソードの描写は秀逸…。ホロリときました…。
こちらの本、続編が今年の2月に出ているようです…文庫化まで待てそうにないなあ…。
- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/11/09
- メディア: 文庫
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