本と落語と旨いもの‥まあさんの東京街歩き日記

本と落語と旨いもの‥日々趣味にまつわることを書きたいと思います。ブログの素人もいいところ、暖かく見守っていただければありがたいです。趣味が共通の方との情報交換もできればなあと思っています。

小萩のかんざし〜いとま申して3〜 北村薫

北村薫氏が、お父上が遺した日記を追いかけ、そのエピソードを独創性豊かに展開…小説、ノンフィクションといったジャンルにとらわれない個性豊かな作品として発表されたもの。
本作は、氏のお父上になる宮本演彦氏の日記を軸にしながらも、その主たる内容は演彦氏が慶應義塾大学の現在でいう文学部、大学院において師事した折口信夫氏と氏を巡る人々の物語であり、北村薫氏の真骨頂ともいえる“文学ミステリ”ということにもなります。
北村薫氏は膨大な資料を吟味、折口信夫氏や横山重氏といった人物の足跡を追いかけ、物語として再現します…しかもそれが日記の時系列と絡んでいくという…読み応えたっぷりの作品です。
小生の知識があまりに追いつかないので、ネットで不明点を調べながら(こういった読み方ができる文明の利器に感謝…)の遅読中の遅読となりましたが、その苦労も愉しみと思えるものでした。
本作は三部作の完結編ということで…第一作は「いとま申して〜「童話」の人びと〜」、第二作が慶應本科と折口信夫〜いとま申して2〜」として発表されています。
なお、「いとま申して」は北村薫氏がお父上から渡された辞世に含まれる一節です…。
小生自身、第一作が発表された頃(おそらく2011年から1年程度…)に図書館本で読みましたから、足掛け10年以上に亘ってやっと三部作を読み終えたことになり、そんなことからも思い出深い作品となりました。
いつか再読、その際にはぜひとも短期間で読み終えたいものです…。