本と落語と旨いもの‥まあさんの東京街歩き日記

本と落語と旨いもの‥日々趣味にまつわることを書きたいと思います。ブログの素人もいいところ、暖かく見守っていただければありがたいです。趣味が共通の方との情報交換もできればなあと思っています。

小萩のかんざし〜いとま申して3〜 北村薫

北村薫氏が、お父上が遺した日記を追いかけ、そのエピソードを独創性豊かに展開…小説、ノンフィクションといったジャンルにとらわれない個性豊かな作品として発表されたもの。 本作は、氏のお父上になる宮本演彦氏の日記を軸にしながらも、その主たる内容は…

聖の青春 大崎 義生

早逝の天才棋士として語り継がれる村山聖さんの生涯を綴ったノンフィクションの作品 やっと読むことができました。 幼少期に重い腎臓病を患ったため、通学すら難しく入院生活を続けざるを得なかった小学生が、将棋に出会いその才能を開花させる物語が綴られ…

女のいない男たち 村上春樹

映画“ドライブ・マイ・カー”の原作が収録された短編集 表題作を含めて妻や恋人を喪失した男の物語が六作品収められています。 私の通勤時間にちょうどよくて、一日一作品を往復の通勤電車内で読切ることができました。月曜から読み始め土曜(は休みですが)…

大炊介始末 山本周五郎

NHK BS時代劇「折鶴」の告知を見て関心が湧き、手に取ったのが山本周五郎氏の短編集である本作になります。 氏の作品は最近では「赤ひげ診療譚」といった有名な長編を感慨深く読んでいるところです。今回は初の短編集でしたが、短編もまた味わい深い作品ばか…

2023年の読書まとめ

年が明け、早八日が経とうとしています。 年末年始の休みで溜め込んでいた読書記録を上げようと思っておりましたが今日になってしまいました。 2023年の読書は1年間で28冊…月4冊、年50冊の目標には届かず…。 10月から2ヶ月ほど会社の関係で読書できなかった…

紗羅乙女 獅子文六

“誰も予想できないラストシーン 文六作品の中でも衝撃の結末にあなたも驚く” そんな、文庫本の帯にあるキャッチコピーに興味津々として本書を手に取りました!獅子文六氏の小説には等身大にして個性的な人が多く登場します。 「どこかに居そうだけど、やっぱ…

ドミノ 恩田陸

久しぶりに恩田陸さんの作品を手に取りました。 そして久しぶりに「痛快、爽快な小説」に出会いました(笑)。 東京駅に近い生命保険の支社、7月最終営業日に倒れ始めたドミノは奇想天外な経路を辿り、加速しながら、好むと好まざるとにかかわらず人々を巻…

ツナグ 辻村深月

一生に一度だけ死者との再会を叶えることができる人=「使者(ツナグ)」を軸にさまざまな過去や想いを抱えた人々を連作の形で描きだす長編小説…文庫本の背表紙にはそのように紹介されており、期待して本書を手に取りました。 全体としてとても面白い小説で…

忍びの旗 池波正太郎

私にとっては、池波正太郎氏の一連の忍者小説(◉)を一巡り、その”締め括り”となるのが本作ということになります。 この一連の忍者小説は、登場人物が重なり連作に近いものもあるのですが、本作は「その一方で」という感じで、三方ヶ原の合戦から大坂夏の陣…

文庫解説ワンダーランド 斎藤美奈子

文庫本の本編の後に付される「解説」にスポットを当てた本作。 筆者は「解説を解説」する難しさを“すっ“と乗り越え、「解説」に潜む魅力や不思議を面白おかしく語ってくれます。その対象は「坊っちゃん」から「永遠の0」まで多岐に亘ることに…。 「解説の解…

娘と私 獅子文六

獅子文六氏と言えば痛快劇の小説が思い浮かびますが、本作は自伝小説です。 600ページを超える長編、いつも読んでいる痛快劇でもなく、なかなか手が伸びなかったのをやっと手に取った…ということになります。 朝ドラの第一作目としても有名な作品なのです…

対岸の彼女 角田光代

角田光代さんの小説はまだ三作目の読書となるのですが、作品ごとに記憶に残る「読み応え」に感心してしまいます。 本作は、結婚や子供(子育て)において、いわば対岸にある二人の女性が出会うことで隔たりが浮き彫りになっていく過程が描かれつつも、やがて…

赤ひげ診療譚 山本周五郎

誰もが知る山本周五郎氏の代表作… 小石川養生所を舞台に若き医生が、武骨な医長に反感を覚えつつも医師としての生き方に共感していく…八つの物語が連作短編集のように綴られ、医生の成長していく過程が描かれます…そして円満な結末に満足感に浸ることができ…

剣客商売(十二) 十番斬り 池波正太郎

このところ同じパターンの繰り返しです… 前回の読後感想を書いてから4ヶ月も経ってしまいました。 その間、本は読んでいましたので、今更ながらではありますがコツコツと書いてゆきたいと思います。さて、読後感想再開は池波正太郎の剣客商売から… 本作は表…

武田信玄 縁の地を訪ねてみました

新田次郎氏の「武田信玄」を読み、また、池波正太郎氏の「夜の戦士」を読み、いつか“躑躅ヶ崎館”があった場所を訪れてみたいと思っておりながら、なかなか時機に恵まれずでしたが…「天気が恵まれそう」だということで思い切り…5月3日に甲府へ日帰りの旅行…

鬼平犯科帳(十四) 池波正太郎

十三巻を読んだのが2月頃でしたから、あまり間を空けなかった十四巻目になります。 読むものを惹きつけてやまない本作ですが… 「五月闇」では馴染みの登場人物であった密偵の伊佐次が命を落とすことに…読み応えのある作品でした。これを受けるように「さむ…

戸村飯店青春100連発 瀬尾まいこ

時々読みたくなる“青春もの”。 瀬尾まいこさんは、見事に期待に応えてくれます。 大阪の下町にある中華料理店の息子として育った一つ違いの兄弟が、高校の卒業と上京、高校3年時の進路の悩みなどを経て成長していきます。実家を飛び出すように東京へ発った兄…

東京會舘と私 辻村深月

遅まきながら辻村深月さんの素晴らしさを知り「朝が来る」「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」に続く三作品めの読書となりました。 前ニ作がミステリだったのに対して、本作は実在する「東京會舘」を舞台とした逸話に創作を盛り込んだ物語ということになるのでしょう…

忍びの風 池波正太郎

池波正太郎氏の一連の“忍者小説“を順不同で以下のように読み進めてきました。 ◉ 夜の戦士 ◉ 忍者丹波大介 ◉ 忍びの女 ◉ 火の国の城 ◉ 蝶の戦記 ◉ 忍びの風(本作) あと「忍びの旗」を読むと、氏の忍者小説をひと周りしたようになります(他にも氏の忍者小説…

照柿 髙村薫

「レディ・ジョーカー」を読んだのが3年前…。グリコ社長誘拐事件を彷彿とさせる設定のもと犯人グループとこれを追う刑事 合田雄一郎の物語が重厚で非常に読み応えがあった記憶があります。 gomahsango.hatenablog.com合田雄一郎が登場する作品では、作中の時…

硝子の葦 桜木紫乃

桜木紫乃さんの二作品目の読書です。 前に読んだ直木賞受賞作の「ホテルローヤル」は表題のホテルとそれに関わる人々を描いた連作短編集でしたが、本作はそれとは異なり長編のミステリになります。 ある男性と歳の離れた妻を軸に様々な人間関係を絡めた物語…

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 辻村深月

つい最近、手にとった「朝が来る」の面白さに魅了され、早速、二冊目として本作を手にとりました。 gomahsango.hatenablog.com私の読む本がミステリのジャンルから少し離れてしまっていたので、頭がミステリを求めていたのか(笑)…時間を惜しんでページをめ…

鬼平犯科帳(十三) 池波正太郎

“鬼平犯科帳“も久しぶりになります。 調べますと1年2ヶ月ぶりくらいになるようで…。 このままだと、シリーズを読み終えるころには還暦を大きく超えてしまいそうですので、少しペースを上げようかななどと思っております。本作と“剣客商売”は自分にとって頭…

朝が来る 辻村深月

辻村深月さんの初読みです。 女性の作家さんの小説をまとめ買いした際に、そう言えば読んだことないな、という気持ちで購入したままになっていたのを手に取ることに…。 一言、素晴らしかった! 物語の構成や展開が読むものを掴んで離さなかったというのでし…

家康、江戸を建てる 門井慶喜

しばらく積読していた本書ですが、今年の大河ドラマの主人公が家康だということで手に取ることに…。著者の門井慶喜さんの作品も初読みになります。 利根川の流路を変える大工事、あるいは貨幣の鋳造など、“江戸”を日本の中心地として作り上げる(建てる)物…

勝手にふるえてろ 綿矢りさ

2023年の1冊目は綿矢りささんの「勝手にふるえてろ」です。 「蹴りたい背中」を初読みしたのが、2021年の年末でしたから1年ぶりの綿矢さんの作品ということになります。 gomahsango.hatenablog.com 繊細で鋭敏な語感を持っておられる作者の文章は、読んでい…

2022年の読書まとめ

1年間で読んだ本の冊数はというと… 2019年 41冊、2020年 36冊、2021年 34冊…そして2022年 21冊でした。 本を読みたいという思いは強いのですが、日々の生活になると読書の時間が後回しになりがち…。 冊数が第一ではないですが、それだけ本との出会いが減って…

AX 伊坂幸太郎

「グラスホッパー」や「マリアビートル」などの流れを汲んだ作品で、本作は、ある殺し屋“兜“が主人公。 極度の恐妻家である“兜“が稼業からの引退を考えることから物語は進んでいきます。 独特の緊張感を孕んだ描写と展開は素晴らしく、“兜”の引退は成るのか…

やっさもっさ 獅子文六

才気にあふれ孤児院の運営に奔走する妻 亮子(ただしあくせくと奔走する真の目的は別にあり)と敗戦により虚脱症になってしまった夫 四方吉(ただし謎の行動あり)を、一癖も二癖もある登場人物が取り囲みドタバタ劇が繰り広げられます。 獅子文六氏の描く若…

樅ノ木は残った 山本周五郎

大藩取り潰しを目論む幕府と、その目論見に立ち向かう仙台藩の家老、原田甲斐の闘いを描いた大作です。 独自の解釈による”原田甲斐”像を造り上げ、1600ページを超える長編を長いと感じさせずに、最後まで読者を惹きつける物語の展開は見事の一言。 山本周五…