本作のモデルとなる久志芙沙子さんを取り上げたテレビ番組を見て興味が湧き手にした一冊。そのテレビ番組もたまたまチャンネルを合わせたらやっていた、、という形でしかも番組も終盤…一体何がどうなって…あまりの消化不良に読まずにはいられないという感じでした。
沖縄出身の久志芙沙子さんは、ただ一作だけの小説を発表、その小説において生まれ故郷の沖縄を“ありのままに”描いたことがかえって故郷の反感を買うことになり…その後筆を折ることになります。
この作品は久志芙沙子さんをモデルに直木賞作家である大島寿美子氏により小説化されたものです。
小説は三人称で描き進められ、それがかえって主人公に入り込めないといいますか…今にして思えば、久志芙沙子さんの真実を知りたいという私の関心で読んでいたこともあるのでしょう…ルポだったらよかったのにと思ってしまいました。資料もほとんど残っていないだろう、幻の作家の思いを描くには小説ということになるのかなとも思いつつ…。ただ、小説の後半で、沖縄の雑誌記者からの取材を受けたことをきっかけに、主人公ツタが自らの人生を振り返る場面は印象的で、物語をしっかりと締め括ってくれた感じです。
- 作者:真寿美, 大島
- 発売日: 2019/12/06
- メディア: 文庫