本と落語と旨いもの‥まあさんの東京街歩き日記

本と落語と旨いもの‥日々趣味にまつわることを書きたいと思います。ブログの素人もいいところ、暖かく見守っていただければありがたいです。趣味が共通の方との情報交換もできればなあと思っています。

幕末新選組 池波正太郎

今月は何かと慌ただしかったようです。
400頁あまりの本書を読み終えるのに二十日間もかかってしまいました。
一方で、本作はあまりに面白く、1行たりとも読み飛ばしたくないと言いますか、じっくりと読まずにはいられず、これだけの時間がかかったようにも思えます。

恥ずかしながら、本作が、私にとっては初の新選組関連の小説でした。
日頃から愛読している池波正太郎氏による『新選組』の物語、作中の人物造形は、いつもながら素晴らしかった。
主人公に据えられた永倉新八は江戸っ子気質に溢れ、物事にこだわらない“さっぱり“とした人物として描かれます。他者に「してやられたり」し、歯噛みもしますが、そんな他者をも温かく受け入れてしましまいます。
本作は、永倉新八の幼少期から老年期までの成長過程が、彼が青春の全てを注ぎ込んだ新撰組の物語とともに描かれていきます。作者である池波正太郎氏も生粋の江戸っ子であり、永倉新八への共感とあたたかな目線で物語を綴り、これが読者の共鳴をさらに呼びます。
作中、幾つも印象的なシーンが描かれますが、私が好きだったのは、薩長に敗れ江戸へ敗走する船の中で、永倉新八原田左之助が京に残した家族を思い男泣きに泣くシーン。
「かまわねえ、泣こうじゃないか」「よし、やっつけよう」
こういった演出をさらりとやってのける池波正太郎氏の作品は、まだまだ読み続けたい…そう思わずにはいられません。

新装版 幕末新選組 (文春文庫)

新装版 幕末新選組 (文春文庫)