本と落語と旨いもの‥まあさんの東京街歩き日記

本と落語と旨いもの‥日々趣味にまつわることを書きたいと思います。ブログの素人もいいところ、暖かく見守っていただければありがたいです。趣味が共通の方との情報交換もできればなあと思っています。

紗羅乙女 獅子文六

誰も予想できないラストシーン 文六作品の中でも衝撃の結末にあなたも驚く
そんな、文庫本の帯にあるキャッチコピーに興味津々として本書を手に取りました!

獅子文六氏の小説には等身大にして個性的な人が多く登場します。
「どこかに居そうだけど、やっぱりいないだろう」そんな感じでしょうか。
全く売れない発明を生業とする父と、貧しい家計を支えながらも明るく暮らしている姉と弟…そこに父の再婚や娘の結婚話が同時に持ち上がり、さらには父の「大発明」も急展開…ドタバタ喜劇が始まり楽しませてくれます。この後どうなっていくのだろうと興味を引っ張り、その結末は…なるほど、これは予想できませんでした。
思うのは、獅子文六氏の他の作品の幾つかもそうなのですが、読者の期待するようなハッピーエンドはあまりない…どこか創りものとて世の中そんなに甘くないよ、そんな風に皮肉を込められてもいるようです。ただし、そこに辿り着くまでの物語は、存分に愉しませてくれる、とても魅力的な作家さんです。

ドミノ 恩田陸

久しぶりに恩田陸さんの作品を手に取りました。
そして久しぶりに「痛快、爽快な小説」に出会いました(笑)。
東京駅に近い生命保険の支社、7月最終営業日に倒れ始めたドミノは奇想天外な経路を辿り、加速しながら、好むと好まざるとにかかわらず人々を巻き込んでいって…その行方は…。
小説の面白さもさることながら、恩田陸さんの多才ぶりに感心しきり(“中庭の出来事“と同じ作者?)です。早速、「ドミノin上海」も購入いたしました!
なお、私が読んだ文庫には巻頭に「登場人物より一言」なる紹介頁(これも秀逸!)があるのですが、単行本には登場人物のイラストも載っているのだそう…機会あれば見てみたいものです。

ツナグ 辻村深月

一生に一度だけ死者との再会を叶えることができる人=「使者(ツナグ)」を軸にさまざまな過去や想いを抱えた人々を連作の形で描きだす長編小説…文庫本の背表紙にはそのように紹介されており、期待して本書を手に取りました。
全体としてとても面白い小説でした…ただ、読み方が難しいですね…ついつい自分の経験や知識に照らして読んでしまうので、50代や30代の男性の描写が頭の中で像を結びませんでした。とはいえ、作者はちゃんと「ツナグ」本人の物語も描いて、すっきりとした読後感を与えてくれます。

忍びの旗 池波正太郎

私にとっては、池波正太郎氏の一連の忍者小説(◉)を一巡り、その”締め括り”となるのが本作ということになります。
この一連の忍者小説は、登場人物が重なり連作に近いものもあるのですが、本作は「その一方で」という感じで、三方ヶ原の合戦から大坂夏の陣の十数年後までを忍びとして生き抜いた男が描かれます。
小説の面白さは言うまでもなく大満足…もう一度、今後は時間の流れに沿って読み直したい、そう思います。

◉ 夜の戦士
◉ 忍者丹波大介
◉ 忍びの女
◉ 火の国の城
◉ 蝶の戦記
◉ 忍びの風
◉ 忍びの旗(本作)

過去の読後感想はこちら(夜の戦士はブログ開設前で感想が残っておりません…あしからず)
gomahsango.hatenablog.com
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文庫解説ワンダーランド 斎藤美奈子

文庫本の本編の後に付される「解説」にスポットを当てた本作。
筆者は「解説を解説」する難しさを“すっ“と乗り越え、「解説」に潜む魅力や不思議を面白おかしく語ってくれます。その対象は「坊っちゃん」から「永遠の0」まで多岐に亘ることに…。
「解説の解説」を通して名作に接し、それらをあらためて読んでみたいと意欲が湧きます…それにしても全部読むには時間がないかなあ。。

娘と私 獅子文六

獅子文六氏と言えば痛快劇の小説が思い浮かびますが、本作は自伝小説です。
600ページを超える長編、いつも読んでいる痛快劇でもなく、なかなか手が伸びなかったのをやっと手に取った…ということになります。
朝ドラの第一作目としても有名な作品なのですが、面白いのかな…かつて「獅子文六」を見るため横浜に行き、獅子文六氏の生涯、歩みに触れたことも思い出されます。
gomahsango.hatenablog.com

本作は亡くなった妻との間に授かった娘、二番目の妻との生活を中心に描かれます。
時代背景の影響も窺われ、妻、娘への氏の考えや思いなどは現在のそれと隔たり、違和感を感じることがないではないのですが、それでもなお、氏の妻や娘に対する愛情、感謝が伝わってくるのが不思議な気持ちにもなります。
ただ、平安の生活を得るほんの手前で病に亡くなった妻の静子さんには、安らかな生活を享受して欲しかった…と思われてなりません。

対岸の彼女 角田光代

角田光代さんの小説はまだ三作目の読書となるのですが、作品ごとに記憶に残る「読み応え」に感心してしまいます。
本作は、結婚や子供(子育て)において、いわば対岸にある二人の女性が出会うことで隔たりが浮き彫りになっていく過程が描かれつつも、やがてはその二人が「あること」を軸に再び繋がっていくという話になります。物語、人物造形いずれもが秀逸なのでしょう…真実味を帯びて読むものに迫ってくるようです。